道角でぶつかるのはパンを加えたヒロインだけにあらず

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「我ながら異色な人生送ってるな俺は」 ガキの頃は先の事なんざ考えずに剣を振ってたが、まさかココに来てそのツケが回ってくるとは思わなかったぜ。もし親父が生きてたら是非とも教育方針について問いただしたかったもんだ。 「・・・次の会社探すかぁ」 不景気なこのご時世に体力と剣しか取りえの無い俺には、工事現場や土木関係しか残されていない気もするが・・・・・・それだと自衛隊時代を思い立たせて仕方なさそうなのでできれば避けたい。 そんな我侭をなたまっては求人雑誌を見ながら公園を出る。しかし、すぐさまドンっと横から衝撃をを受ける。 「っと。すみません」 雑誌に視線を落としていたから前を見ておらず。誰かとぶつかってしまったと思い直ぐに謝罪する。 「・・・あ・・・あぁ・・」 ぶつかったのは上下とも黒い服に黒い帽子と黒で統一された男。しかしどこか焦ったような、驚いてるような顔で後ずさりながら俺を凝視している。 「あの・・・?」 「俺のせいじゃねぇ!俺のせいじゃねぇぞ!!」 不思議に思った俺が声をかけた瞬間、男は叫び出してそのまま走り去ってしまった。 「・・・あ?」 そこで漸く体の異変に気付いた。熱い。左の胸が焼けるように熱い。 ゆっくり視線を下ろすと、胸より少し下だろうか・・・真っ赤に染まった包丁らしき物が深々と刺さっており、そこから生ぬるい血がスーツを濡らしていた。 「・・・っ!っマジかよっ」 事態を把握した瞬間。急激に痛覚が襲い、呼吸するたびに血を吐きそうに痛みその場に倒れる。 死ぬ 諦めとかそんなんでもなく、頭がそう直感した。血が止まらず、心臓の音がバクバクとうるさく、息ができないほど痛く、恐ろしく寒い。 何分たったかも判らず、延々とこうしてるとすら錯覚するほど頭が麻痺してきて、その混乱から逃れようと睡魔に似た何かが瞼を下ろそうとする。 (・・・あぁ。ろくでもねぇなぁ・・・) もはや声もでない俺は、自嘲じみた事を最後にその人生に幕を降ろした。 そしてこれが全ての始まりだった
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