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「知らない天井だ」
眼が覚めてからすぐさまこんな台詞が出るあたり俺も中々余裕があるな・・・。
そんな事を思いながら首を動かして周りを見渡すが、白いカーテンが四方を囲んでおり残念ながら天井しか部屋を特定するものが見えない。どうやらあの後病院に運ばれて一命を取り留めたらしい。現代医学万歳。
「・・・あれ。傷口すらない」
上半身を起こし、刺された傷を見ようとワイシャツのボタンを外して見てみたが、そこには傷口どころか縫合の後すらなかった。
「つか、なんでワイシャツ着てんだ?」
着慣れていたせいで気にも止めなかったが・・・入院してる筈なのに俺はワイシャツにスーツのズボンというスタイルだった。そして恐らくこれは俺のスーツだ。ワイシャツには血の跡すらないが、確かに刺されたであろう場所には確りと切れ込みがあった。
「訳わからん」
「ならば説明しよう!」
瞬間。ジャッっと正面のカーテンが開かれ、白衣を着た男が勢い良く姿を現した。少しビクッてなった。
「おはよう青年。見たところ特に異常が無い様で何よりだ」
「・・・はぁ。あの、お医者さんですかね?」
「え?違うけど?」
「あ、はい」
じゃぁ誰だよ。などと突っ込みたい気持ちを抑えつつ、男がベットに脇においてある椅子に腰掛けるのを確認してから改めて容姿を確認する。
肩にまでかかる黒髪をオールバックで纏め、少し色付きのサングラスをかけている以外は普通に医者変らない格好だ。
「今君はこうしてベッドで寝ているわけだが。なぜこんな事になったかは覚えているかい?」
「あぁはい。通り魔に刺されてぶっ倒れました。刺されたというかぶつかった拍子に刺さったというか・・・」
前後の記憶はしっかりあるね。っと男はカルテのようなバインダーに挟まれた紙にペンを走らせる。
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