0人が本棚に入れています
本棚に追加
でも・・声が消えて見回すと、どの節穴にも目がありません。
小僧さんが消えてしまった。
しばらく方々を見ていたけれど、そのうち心も鎮まって、お茶
でも飲もう、何か食べよう・・そんな気持ちになれてくる。
「目が怖いのは、目がないから」・・そうかも知れないと思うの
です。
二つも目があるくせに見る目がない。見抜くだけの力量がない。
それで結婚に失敗し、おなかの子も葬ってしまったのです。
だから私は臆病なのです・・そんなことをぼんやり考え、
ようやく体を動かして、お菓子とアイスティを用意した。
少し食べて少し飲んで。それでまた見回しても小僧さんの目が
なくて・・。
なんとなくふらりと立って、そのままベッドに崩れたわ。
夕べよく眠れなかったから・・それと緊張がいきなり解けて睡魔が
襲ってくるのです。
瞼が自然に閉じていく。
そしてそのまま・・え、五時間も・・正体をなくしてしまって
熟睡してた。毛布にくるまり眠ったはずが、毛布をはねて、だらし
なく脚を開いて寝ていたわ。
女の何もかもを小僧さんに見られてしまったことでしょう。
起きたときには気怠くて、でもなぜか・・それが不思議だったの
ですが、独り寝の寂しさをいつもほどは感じない、・・そんな目覚め
だったのです。
あ、そうだ・・目が覚めたのはおトイレのため・・それでまた胸が
苦しくなってくる。お部屋の中の小さなバケツなんですよ。
節穴を見回しながらベッドをそっと抜け出して、お尻をかぶせて
体を沈めていくのです。
最初のコメントを投稿しよう!