第1話

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 でも・・声が消えて見回すと、どの節穴にも目がありません。  小僧さんが消えてしまった。  しばらく方々を見ていたけれど、そのうち心も鎮まって、お茶 でも飲もう、何か食べよう・・そんな気持ちになれてくる。 「目が怖いのは、目がないから」・・そうかも知れないと思うの です。  二つも目があるくせに見る目がない。見抜くだけの力量がない。  それで結婚に失敗し、おなかの子も葬ってしまったのです。  だから私は臆病なのです・・そんなことをぼんやり考え、 ようやく体を動かして、お菓子とアイスティを用意した。  少し食べて少し飲んで。それでまた見回しても小僧さんの目が なくて・・。  なんとなくふらりと立って、そのままベッドに崩れたわ。 夕べよく眠れなかったから・・それと緊張がいきなり解けて睡魔が 襲ってくるのです。  瞼が自然に閉じていく。  そしてそのまま・・え、五時間も・・正体をなくしてしまって 熟睡してた。毛布にくるまり眠ったはずが、毛布をはねて、だらし なく脚を開いて寝ていたわ。  女の何もかもを小僧さんに見られてしまったことでしょう。  起きたときには気怠くて、でもなぜか・・それが不思議だったの ですが、独り寝の寂しさをいつもほどは感じない、・・そんな目覚め だったのです。  あ、そうだ・・目が覚めたのはおトイレのため・・それでまた胸が 苦しくなってくる。お部屋の中の小さなバケツなんですよ。  節穴を見回しながらベッドをそっと抜け出して、お尻をかぶせて 体を沈めていくのです。
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