第1話

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「ふふふ、もう気づいたみたいだね、早いねぇ、足りないのは それなんだ。見えるものを見るから見えなくなる。見えないもの を見ようとすると見えてくるものがある。さあ立って、いつまで しゃがんでいるのかな・・ふふふ」  結界の向こう側は地獄であって、小僧さんは地獄の住人。  だとしても、私は小僧さんに悪意をまるで感じない。騙そう なんて、そんなふうではありません。  それどころか、つつまれてる感じがするの。澄んだ瞳が大きい の・・大きなものを感じるのです。  私は自然に立ちました。なんだかもう、恥ずかしさを通り越して しまってる。  相手は亡者・・人生の大先輩・・そう思うと素直になれるし、 気持ちも欲求も、女としての欲望も、隠さず表現できそうで・・。 「うんうん、いい目になった、いい子だね・・さあさあ、恥ずかし がらずに這ってごらん。そこに寝て体を開いて見せてごらん」  不思議な力に衝き動かされ、小僧さんの言うがままに、私は操ら れていたのです。女としてのポーズというのか、ヘンな力みが消えて いた。  そして・・私の中でそう心の所在が定まった瞬間、板壁に無数に ある節穴すべてに、無数の目が覗くのです。もうどれが小僧さんの 目なのかわかりません。 「女の子・・可愛いね」 「いいカラダ・・抱きたいなぁ」 「揉んじゃうよ」 「舐めちゃうよ」 「ほうらほうら濡れてきた・・くくくっ」  ああ溶けていく・・浴びせられる無数の声が嬉しいの。
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