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それからのことは、とてもここには書けません。女の尊厳に
かかわるような破廉恥なお話になりますからね・・私は際限なく
嬲られ、際限なく果てていき・・女のよろこびに打ち震えていた
のです。
幾日かして、私はまた北鎌倉を訪ねていました。仕事じゃなく、
懐かしい場所を今度こそ歩きたかった。
そしてその帰り道、あの若いママさんにお会いして、それから
尼寺に立ち寄ったのです。
「あら、それじゃ二日目にもう?」
「ええ、三日なんて時間の無駄だと思ってしまって。小僧さんの
目のある板壁をちょっと押したら、紙人形のひとつが倒れて結界が
崩れたんです」
「あらそう・・うふふ、女はみんな自ら結界を張りめぐらし、その
世界の中にいて、節穴から外を覗いて羨んでいるだけなんです。
自分を封じておかないで自ら結界を破らないと、危険もない代わりに
悦びもない、そんなつまらない世界に生きなければならなくなる」
「ええ、そしてその結界が大切なものまで遠ざけてしまうんですね」
帰ろうとしたときに、落ち着いて美しい尼僧さんがおっしゃいま
した。
「あの四体の紙人形ね、あれは式神というのです」
「しきがみ?」
「そう式神です。その昔、陰陽師が操ったと言われていますが。
お寺なのに神様とはおかしな話ですわね。神も仏も安易にすがる女が
多すぎて、きっと頭を抱えておいででしょうけれど・・うふふ!」
清々しい秋風の夕刻でした。
緑の起伏にいまにも沈む斜陽のにじみを、私は誇らしく乳房を
張って見つめていたわ。
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