第1話

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 それからのことは、とてもここには書けません。女の尊厳に かかわるような破廉恥なお話になりますからね・・私は際限なく 嬲られ、際限なく果てていき・・女のよろこびに打ち震えていた のです。  幾日かして、私はまた北鎌倉を訪ねていました。仕事じゃなく、 懐かしい場所を今度こそ歩きたかった。  そしてその帰り道、あの若いママさんにお会いして、それから 尼寺に立ち寄ったのです。 「あら、それじゃ二日目にもう?」 「ええ、三日なんて時間の無駄だと思ってしまって。小僧さんの 目のある板壁をちょっと押したら、紙人形のひとつが倒れて結界が 崩れたんです」 「あらそう・・うふふ、女はみんな自ら結界を張りめぐらし、その 世界の中にいて、節穴から外を覗いて羨んでいるだけなんです。 自分を封じておかないで自ら結界を破らないと、危険もない代わりに 悦びもない、そんなつまらない世界に生きなければならなくなる」 「ええ、そしてその結界が大切なものまで遠ざけてしまうんですね」  帰ろうとしたときに、落ち着いて美しい尼僧さんがおっしゃいま した。 「あの四体の紙人形ね、あれは式神というのです」 「しきがみ?」 「そう式神です。その昔、陰陽師が操ったと言われていますが。 お寺なのに神様とはおかしな話ですわね。神も仏も安易にすがる女が 多すぎて、きっと頭を抱えておいででしょうけれど・・うふふ!」  清々しい秋風の夕刻でした。  緑の起伏にいまにも沈む斜陽のにじみを、私は誇らしく乳房を 張って見つめていたわ。
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