第1話

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 節穴小僧  岡崎 潤  尼寺です。  古くからの街のはずれにぽつんとある  古くからの尼寺です。  ここはちょっと知られていてね、  女をもっと見つめてみたくて  女たちが訪ねて来る尼寺なのです。  いつまでも娘の心を保っていたい、  可愛い女がやってくる。  別名があるのです。   尼寺なのに、犯され寺とも呼ばれてる。  やってきた娘らは、このお寺の本堂で、  三日三晩、一糸まとわぬ姿となって過ごすのですが、  もちろんここは尼寺なので男の人はいないのです。  幾人かの尼僧さんが修行をする場。  尼僧さんはみんな若くて綺麗な女人。  それなのに犯され寺とはおかしいでしょう。  秘密は本堂にあるのです。古い古い本堂は、  四方がぐるりと板壁で、その壁の朽ちた板に  いくつもの節穴が空いている。  ぽっかり空いたその穴から、三日三晩、  全裸の女は見つめられて過ごすのです。  本堂には結界が張ってあり、本堂から出なければ  三日が過ぎて女は無事に出られるわ。  ですけどね、それがすごく苦しいことで・・。  結界に阻まれて小僧さんは入れない。  入れないから女を外へと誘い出すと言われている。  小僧さんは男の子、とても可愛らしい目をしてる。  でも男の子は節穴小僧。女なら誰もが困ってしまう  目をしてる。板壁のそこらじゅうの節穴から、  女なら困ってしまう目にさらされる三日三晩。  だからここは犯され寺と呼ばれているの。  女が自分を見つめるために、  これよりない試練でしょうね。  尼寺らしく裏木戸からこっそり入って、  帰るときもこっそり帰る。  それもまた女らしくていいかと思うわ。  さあどうぞ。  裏木戸からおいでなさい女人さん。  ちょっと怖い尼寺へ、さあどうぞ。
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