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それから月日は流れていって、私はいま三十三歳。
好きだと言ってくれる人がいる。けれども切り替えがきかないの。
こんな想いを引きずったままお付き合いはできません。
こんな私のどこがいいのか・・なんてね、卑屈に考えてしまう
のです。
でもお寺に来たのはそんなことじゃありません。仕事のついで。
北鎌倉は懐かしいわ。学生の頃に歩いた記憶が残ってて、アジサイ
の綺麗だった尼寺にたまたま立ち寄った。
仕事で近くに来たのですけど・・私は雑誌の編集者。それで作家
さんの自宅を訪ね、原稿をいただいた。ネット時代ですからね、
メールでもよさそうなものですけれど、その先生はいまだに万年筆で
手書きです。
そのとき偶然お昼時と重なって、それで懐かしくてぶらぶらして
いたというわけで。
その作家の先生の担当だった後輩が結婚で退社して、古株の私に
回ってきたってことですね。
そしてそこで不思議な書き付けを見つけてしまった。
尼僧さんにお話をうかがって、それのできるお方を紹介していた
だいて、私はお寺を出たのです。
その方はお寺の裏手にひろがる山を越えた・・山と言っても北鎌倉
の街並をつくりだす緑の起伏の向こう側。歩いてそれほどかかるところ
じゃありません。
尼僧さんに電話でお話しいただいて、すぐさま私は向かったのです。
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