第1話

6/17

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 四つにたたんだ白い紙から、四枚の分身のような紙人形ができ あがる。作り慣れているようで、五分とはかからずにそれは できてしまったの。私のような女は多いと笑われました。  そして次に、その四枚重ねの切り紙人形をテーブルの脇にどけて 置くと、もう一枚、今度はお札みたいな縦長の和紙を用意して、 それからが・・見ていて私はおかしくなった。  和紙に筆で文字を書くのですが、その筆が、若い人らしくって 筆ペンなのです。この人のお婆ちゃんなら硯で墨でも擦って、 それらしく書くのでしょうが、いかにもいまふうなインスタント 感覚で笑えてしまった。  でもその筆の運びが・・彼女はとても達筆で、紙の真ん中に さらさらと「女人行」と記される。  女人の行・・女の修行・・そういうことだと思っていました。 「さあできましたよ。順序がありますからよく聞いてくださいね」 「あ、はい」  正式な儀式らしい・・そう思うと私は緊張し、ドキドキしながら 聞いていた。 「あ、そうそう、その前にお住いはマンションですか?」 「はい」 「ワンルームかしら?」 「独り住まいで1LDKですけど実質はそうかと・・それが何か?」 「一度はじめると正確に三日三晩、結界から出られなくなります からね。第三者を入れてもいけない。お寺でお聞きでしょうが、 節穴小僧は地獄の亡者。つまり結界の外は地獄ということです。 ですからこの行は必ずお一人で行ってくださいね。もうおわかりだ とは思いますが、たとえおトイレであっても・・」 「あ・・」 「うふふ、恥ずかしいことになりますし、いろいろ準備をなされて からでないとお水も飲めなくなりますよ。では手順をお話ししま しょう・・」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加