第1話

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 切り抜かれた四枚それぞれを、真ん中で二つに折って、 それはちょうど紙相撲のお相撲さんのように立つ人形を作るの です。 「それをお部屋の四隅に置くのですが、四枚が必ず背中合わせ になるように置くんですよ。四隅それぞれ、外に向かってにらみ をきかせ、亡者どもにこれより入るなと告げるためです。内向き に置くと逆に亡者を招いてしまう」  それがちょっと問題でした。1LDKの一部屋はつまり寝室。 それはちょっとね、狭いしキッチンにも立てなくなる。  で、LDKなのですが、バルコニーに面した南側とキッチンの 隅はいいのです。でも最後のお人形がバストイレに遮られて置け ません。できるだけ四角の空間になるようにと言われています。  そうなるとキッチンに置けなくなって、結局お部屋の四隅に なるでしょう。人形同士の間に遮るものがあってはならないと 言うのです。  結界が乱れ亡者どもにつけいるスキを与えてしまうということ ですから、どうしようもありません。    でもそうなると三日三晩トイレにも行けなくなる・・そこまで 考えていなかった私には、バケツでも用意しておくほかなかった のです。  お掃除用の小さなバケツをお部屋の中に置いてみて、冷静に 見下ろして、そんな姿までを見られてしまうと思っただけで体が 熱くなってくる。  四体の紙人形をお部屋の角々に背中合わせになるよう置いて、 それから私は、床に置いたお札の前の座布団に正座をしました。  正座まですることはないのでしょうが素っ裸の女なんです、 だらしなく座ったりはできません。    そしていよいよ・・震える手をお札に伸ばし、何度もやめようか と迷いながら、伏せたお札を表に返してそっと置いた。
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