【ぴんぼけ大名・瀬田掃部】

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  「何処へ行く気だ。」 ふと、背に響く声。 滅多に姿を見せない兄弟子にも虫の知らせはあるようで 「行きませんよ、何処にも。」 「…勇み足の判り易さは相変わらずだな、瀬田よ。」 「体格の所為でしょうか。」 「まぁ、一服点てろ。」 答えても尚、古田の視線は瀬田へ突き刺さったままであった。 「面目ありません、古田さん。」 「ふん。すっかり染まったな…此処の空気に。」 「そうですね。」 「若気のある貴様も嫌いではないが、そうしている方が貴様らしいと思うは俺の眼鏡が澄み過ぎているからだろう。」 「確かに…僕の眼鏡は、すぐに曇ってしまいます。」 「視覚よりも先に働く直感(もの)があると云うのは…辛いか?」 「いいえ。戦では此れが、役に立つ時もあります。」 「……。」 「それに…」 瞳を細める瀬田。 「今更手放せません。見守る事しか出来なかった…情けない僕への、罰だと思っていますから。」 「……甘ったるいな、貴様の茶は。」 「有難うございます。」 「次があるなら、俺も共にその罰とやらを受けてみるか。」 淡々と進む話を区切り、古田は続ける。  
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