【三時のおやつは金平糖】

5/11
前へ
/73ページ
次へ
  「今日は特別だ。」 機嫌が良いのか、王は僕を黒馬に乗せたまま手綱を引く。 何処へ行こうと言うのだろう。 「お~い、与一郎!」 器用に馬を翻しながら、呼ぶ。 間も無く現れたのは白馬に乗った美丈夫。 家紋で権威を見て取れる人物は 返り血も其のままに王の右へ並んだ。 「戦場(此処)で名前叫ばないでよ」 「横槍受けたら如何してくれるの」 淡々と紡がれる言葉は驚くほど抑揚が乏しい。 「そう堅いこと言うなって。」 「何の用」 「計ってくれ、時間。」 王は其の人物に何かを放り投げた。 「可成は」 「帰った。」 「…光秀」 「何だよ、嫌なのか?」 「別に」 受け取った掌程の装飾品を開き、人物は視線を落とす。 表情も乏しいので、其れが肯定なのか否定なのかすら、判らない。 ふと、視線が合う。 「あ……。」 戸惑ってしまった。 挨拶をする間も無く、直ぐに逸らされる視線はまた、背に在る王を見た。  
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加