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「誰其れ、隠し子」
「馬鹿。何でだ。」
「また変な拾い物したの」
「変って、お前な~…。」
「…十分前」
「おわ、本当かよ。急がねーと見れなくなるな。」
「其の“荷物”が無かったら余裕だった」
「…次同じ事言ったら斬るぞ。」
「誰に言ってるの」
(あれ、今…笑った?)
小さな驚きに掻き消され、荷物と言われた事は微塵も気にならない。
そして言い終えるより早く其の人物は戦場を外れ、脇道を駆け出した。
「お先に」と、背中が語っている。
「あっ、お前…俺より先行くなよな~!!」
追って馬を出す王。
孤高から外れた、緩やかな焦燥を僕は今日初めて垣間見た。
此れは夢だろうか。
薄暗い一本道を二頭の馬が駆(はし)る。
白と黒が、追い付き追い抜きを繰り返しながら、ただ静かに。
戦場の脇をひたすらに、駆っている。
しかも其の二頭の綱を握っているのはどちらも、日ノ本に唯一無二と言われている大人物だ。
何故僕の様な人間が、今此処に居るのだろうか。
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