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「おう、瀬田か。」
「先日のお茶会、お疲れ様でした。」
「ああ、ったく…とんでもねぇ奴だったな。」
「流石は幽斎玄旨の御嫡男と言った所でしょうか。…底が知れません。」
「甘やかすばっかりだと思っていたが…ありゃあ詐欺だな。」
「一本取られてしまいましたね。」
くすくす。
小窓からそよぐ風の様に、涼やかに。
師へと労いの茶を差し出す男は今日も品良く笑う。
瀬田正忠。
青を基調とする佇まいは品格と相俟って、其の長身が齎す威圧感を相殺した。
秋も暮れに差し掛かり、冷え始めた空気から身を守る縞模様の羽織が、年長たる箔をも、際立たせている。
「そう言や、名前変わったんだってな。」
「はい。」
「どんな名だ。」
「掃部との位を拝領致しました。」
「掃部?掃除屋でも始めんのか。」
「殿下の御意向ですから、僕の口からは何とも。」
「まぁ、よく気の付く奴だからな、お前は。其の辺り買われてんのかも知んねぇな。」
「有難うございます。」
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