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少し先の風景がゆらゆらと揺れた。
それはこの熱された鉄板のようなアスファルトがもたらす、夏ならではの光景だ。
「もう無理……死ぬっ」
思わずそうつぶやいた言葉すらもすぐに蒸発して、この絵具をこぼした様に真っ青な空にゆらゆらと昇っていく気がする。
雲の一つくらいあってもいいのに。
一瞬でもこの太陽の熱を遮ってくれたら嬉しいが、そんなことをしそうな雲は見当たらず、私は今日何度目かの溜息をついた。
ここまでの道のりはできる限り細い道を通り、それを囲む家々が作り出す影の中を何とか進んできたが、ここからはそうもいかない。
目指す場所は大通りを挟んだ反対側にあるし、横断歩道を渡るにはその大通りに沿って進まないといけないのだ。
この夏休みという暑さを避けるための期間に、登校日なる謎のイベントを用意した人物を激しく恨む。
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