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「きゃ?!」
大通り沿いの道に出たところで何か黒いものが横切る。驚いた私は声を上げ、そしてすぐにまた溜息をついた。
……ええ、わかってますよ。この子には何の罪もないことは。だけど何も今日に限って──
「私の目の前を横切ることないのに……」
「にゃ?」
真っ黒な子猫は「何のこと?」と言わんばかりに私を見上げた。
黒猫が横切ったら……なんて、そんなことは迷信だと思うけれど、ただでさえ気乗りしていないこの道のりを進んでいく気が削げてしまう。
そんなことを考えたのも束の間で、私は慌てて手を伸ばした。
それは予想外の動きを見せた子猫に伸ばしたものだったが、虚しく空(くう)を掴んだだけだった。
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