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何を思ったのか、大通りに向かって走り出した子猫。
間が悪いことに、迫るのは大型のトラック。運転手はこの事態に気づいていない。いや、気づいたとしても遅すぎる。
……やるしかない。
誰に尋ねたわけでもないが、私は自分自身の言葉にうなずく。
目を閉じて、意識を集中する。
すっと世界から音が消え、体を押さえつけるような強い力を上下左右から感じる。強い重力の中で強風が吹いているよう、というのが近い形容だろうか。
ぐわんぐわんと天と地が混ぜ合わされているような感覚で、乗り物酔いの様になってしまうのもいつものこと。
だけど、気持ち悪いなんて言っている暇はない。
目を開けたらすぐに行動しなければ間に合わない。
──さあ、走れ私。
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