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目を開けた私はある場所に向かって走り出した。ある場所──子猫が出てきた場所だ。
「ちょっとストップ!!」
「にゃ?!」
子猫は突然飛び出してきた私に驚き、逃げようとする。当然のことだけど。
しかし、そこで子猫を逃がしてしまってはさっきと同じ結果になりかねない。
「お願い!!ちょっとだけ大人しくしてて!!」
ぐっと抱きしめると爪は容赦なく腕へと食い込む。
引っ掻かれるのは覚悟の上だったが、その痛さに悲鳴を上げそうになり、奥歯を噛みしめて何とか耐えた。
トラックが通り過ぎるのを待って、私は子猫を抱く力を緩める。
その真っ黒で柔らかい体を地面へとそっとおろすと、一目散に駆け出して、姿はすぐにどこかの建物同士の隙間に消えた。
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