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「もう飛び出しちゃだめだよ」
そんな私の言葉は聞こえてはいないだろう。
だけど、そんなことはどうだっていい。無事ならそれでいい。
よかった。今回は助けることができた。
立ち上がろうとした私は上手く力を入れることができず、すぐ横にあった自動販売機にもたれかかってしまう。
体は深い海の底にいるように重く、思考は深い霧の中に迷い込んだように不明確。
これはちょっと、やばいかも……。
熱いはずのアスファルトにひざをついても、その感覚すらも分厚いガラス越しで、"あ、倒れる"なんて他人事のように思いながら、目の前に迫る地面を見た。
しかし倒れてしまう寸前、ぼやける意識を呼び覚ます声が聞こえた。
「ひより!!」
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