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……
「主題歌の話が来てるんだ。それも、プロデュースは板東さん。」
その話が持ちかけられたのは、映画の発表とほぼ同時。
今年の冬公開のこの映画の、主演は俺だけではない。
板東雅貴と染井海のW主演だ。
二人の兄弟を軸に、ある一つの家族を描いたファミリー映画。メディアではそう紹介されている。
そして、その兄弟を演じるのが、俺と板東さんだ。
板東雅貴と染井海の兄弟設定。
どこかで聞いたような話に、初めて聞いたときは思わずふっと笑った。
古川さんの一件で、板東さんや俺の仕事を台無しにした、と泣き叫んだ流那。
結局、そんなことは思い過ごしだったんだ。
今、こうしてこの仕事が舞い込んできたんだから。
「板東さんのラジオでの、海君の生歌の反響が思ったより良くてね。板東さんの方から持ちかけてくれたんだよ、この主題歌の話。」
あの日出演したラジオで、板東さんの生歌コーナーに特別出演で俺も歌わせてもらった。
リスナーからリクエストされた板東さんの代表曲を、デュエットで歌うことになった。
もちろん板東さんの番組だし、出しゃばる気もさらさらなかった俺は、とにかく板東さんの邪魔をしないように、コーラスのような気持ちで歌ったのを覚えている。
「もともと制作サイドからは板東さんに曲の依頼が来てたらしいんだけど、やっぱりこの映画は弟目線だから海が歌った方がいいんじゃないかって言ってくださったんだよ。」
初め興奮気味に意気揚々と話していた杉田は、俺の顔を見ながら徐々に眉を下げていった。
「…引き受ける、よな?」
俺が首を横に振ると、困ったようにはあとため息をついた。
「こんなチャンス、めったにないんだぞ?」
そう言って、ありえないというように頭を振った。
「ちょっと昔痛い思いしたからって、こんなでかい仕事投げるなんて、どうかしてるよ。」
前のマネージャーから聞いたのか、俺の過去をちらと匂わせた彼を、じっと睨んだ。
「アンタは話を聞いただけだから、わかんないんだよ。何も知らないくせに、勝手なこと言わないでください。」
冷たく言った俺に、杉田は傷ついたように口をつぐんだ。
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