84人が本棚に入れています
本棚に追加
~Runa side~
二人、より添いながらイヤホンを片耳ずつはめ、耳を澄ます。
隣で左耳にイヤホンを付けた彼の肩に、そっと頭を乗せながらその左腕に絡ませた右手で、音楽プレーヤーの停止ボタンを押した。
「どう?」
「これ本当に流那が作ったのってぐらい、驚いちゃった。本当にすごいよ。」
「ふふっ、ありがとう。」
まさにいはイヤホンを外すと、私に返す。
まさにいの部屋。
忙しい合間のオフタイムを、私のために割いてくれたまさにいに、手作りケーキで精一杯のもてなしをする。
休日のまさにいは、いつか見た『日常』を描いた彼のPVよりもちょっとだけ無防備で。
白のTシャツにグレーのスウェットパンツ。
微笑む左ほほにはまだ少し寝跡がついているし、後ろを向けばぴょんとはねた寝癖が可愛い。
幸せ…
私も右耳から外してプレーヤーごとテーブルの上に置いた。
やっと完成した、バンドサークル用の楽曲のデモテープ音源をいち早くまさにいに聞いてもらったところだった。
「それはそうと、まさにい。
映画主演おめでと~~~!!」
そう言ってぎゅっと抱き着くと、あははと楽しそうに笑って私の頭をやさしくなでた。
「ありがとう、流那。」
先日メディアでも大々的に報じられた、板東雅貴の主演映画。
今日も、それをお祝いするのが最大の目的で、張り切って手作りケーキを焼いてきたのだった。
なにより驚いたのは、その映画が『板東雅貴・染井海のW主演』ということだ。
しかも、二人が兄弟設定って。
思わず監督やスタッフの名前から『古川蒼真』を捜してしまったが、当然見当たらなかった。
全く別のところから、同じような話が来たらしい。
なんとなくほっとしたのを覚えている。
「撮影はいつから始まるの?」
「もう今月の半ばから早速。」
「えー!そうなんだ。また忙しくなるね。」
「うん。でもドラマと違って一気に撮っちゃうからね。一か月くらいじゃないかな。」
「どこでやるの?」
「あ、それがホテル借りてロケなんだよね。」
「わー、そしたら一か月会えなくなっちゃうのかー。さみしい。」
最初のコメントを投稿しよう!