第8話

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あからさまにしゅん、とうなだれると、まさにいはどこか嬉しそうに笑って私の頭にポンと手を添えた。 「あっという間だよ~。お土産買ってくるから。ほんとのお土産。」 「うん。楽しみにしてる。」 「でも、僕映画なんて久々だから緊張しちゃうな~。そんなに数出たことないし。」 確かにまさにいは歌手活動と俳優業の二足のわらじなので、意外と映画の出演本数は少ないかもしれない。 「海君のほうが、映画慣れてるんじゃないかな~。」 「え~?そんなもん?」 「だって、売れっ子じゃない~」 「まさにいだって、大物じゃない。」 「ええ~?大物じゃないよ~。」 確かに、少女漫画の実写化とか、恋愛小説の実写化とか、ヒロインの相手役と言えばいつも染井海っていう印象はあるけど…。 私の知らない一か月間を、まさにいと一緒に過ごすのかと思うと、海に嫉妬してしまう。 「昨日もスタジオ入ってたって言ってたけど、何かレコーディングしてるの?」 まさにいとの昨日のメールを思い起こす。 昨夜、今日会う約束を取り付けた時、まさにいはスタジオにいると言っていた。 まさにいがスタジオで仕事をしているときは、音楽活動をしているということだ。 新曲制作だったり、ライブの音源づくりだったり。 最新のまさにいの歌手活動と言えば、ドラマの主題歌制作だったため、昨日のスタジオでは何をやっていたのだろうと不思議に思い尋ねた。 すると、思いがけない返事が返ってくる。 「あ。実は、まだメディアに発表されてないんだけどさ。」 二人だけしかいない空間にもかかわらず、声を潜めたまさにいにつられ、私も少しドキドキしながら耳を寄せた。
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