第8話

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確かに、なかなかやるじゃんとは思ったけど。 まさか板東雅貴に見初められてしまうとは。 本物の歌手から見ても、海の歌ってすごいんだ…。 まさにいに認められている。 なんだかそれだけで羨ましいような、悔しいような 気分にさせられる。 「じゃあそれをもう作ってるの?」 「うん、まあ曲の構想を練ってる感じかな、まだ。撮影前に作曲ぐらいは形作っとかないと間に合わないかなと思って。」 「そっか。でも結構楽しみかも。まさにいの歌を他の人が歌うって、初めてじゃない?どんな感じなんだろう~。」 私が思いをはせるようにそうつぶやくと、まさにいは一瞬笑った後、どこか切なそうな表情になる。 「でも、実現しないかもな―…」 「え?」 不意になんとはなく呟かれたセリフに、思わず聞き返した。 まさにいは困ったように眉を下げて笑う。 「実はね。海君サイドからまだ承諾されてないんだよね。」 「え、それって、まさにいの提案をまだ引き受けてないってこと?」 「うん、そう。」 どういうこと? すっかりまさにいの歌を歌う海の姿を思い浮かべていた私は、思わぬ現状に目を瞬いた。 板東雅貴のプロデュースを引き受けるのに、なにか躊躇する必要、ある?? あの人、歌好きなのに。 自分が言い当てた、彼の『好き』を思い出す。 カラオケで楽しそうに歌っていた姿は、今でも思い出せるぐらい、印象に残っている。 それに、私が言い当てた時の、驚いたような顔も、目に焼き付いていた。 それなのに ――なんで?
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