第8話

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~Kai side~ 明後日から映画の撮影が始まる。 明日も取材の仕事が入っているので、今日は一日オフにしてもらっていた。 仕事用のスーツケースを引っ張り出し、ロケの荷造りを始める。 映画の主演を張ることは初めてではないが、撮影全体がほぼロケ、というのは初めてだ。 なんとなく緊張感を覚えながらスケジュール表を確認し、必要なものを詰めていく。 台本も、もうちょっと読み込まないと。 今まで恋愛ものばっかり出演してきた自分にとって、今回の家族ものは珍しい。 感情を乗せやすい恋愛ものとはまた違うだろう。 はたして自分がしっかり演じることができるのか、不安は残る。 ある程度片付いたところで、本日二杯目のコーヒーを淹れ、一休みする。 しばらくぼーっとしていた時。 ピンポーン 突然のインターフォンに、静寂を破られた。 誰? 少し怪訝に思いながら様子をうかがっていると、 ダンダンダンッ と激しく扉をたたかれる。 チッ 舌打ちをしながら立ち上がる。 その間にも扉をたたく音はやまない。 一体誰だよ。 それでもこの音はさっさと止ませた方がいい。 近所で騒ぎになっても困るし、なにより俺がここに住んでいることは周りにばれない方がいいに決まっている。 「はい?」 イラつきながらドアを開けると、 「あ…。」 ドアをたたこうと腕を振り上げた姿勢の流那と目があった。
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