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「…何しに来たんだよ。」
ありえない。
連絡もなしに突然一般人が家にやってくるとか。
仕方なく流那を部屋に入れ、自分は先に奥へ進んで問いかけると、俺の心を読んだように彼女は言った。
「ごめんなさいね、連絡もなしに突然おしかけて。
でも私、あなたの連絡先知らないし。」
……それもそうか。
いやでも、板東さん通すとか。なんか手があるだろ。
「まさにいに頼もうかと思ったけど、私があなたの家知ってるってこと、知られたくなかったし。」
なんでこいつ、俺の心が読めるんだ?
ズバズバ心の声に返され、不審に思っていると、彼女は肩にかけた重そうな鞄をバンと床に置いた。
ここ、おまえんちじゃないんだけど。
抗議の目でジロリと振り返ると、強い瞳で睨み返される。
なにを怒ってるんだ?
不思議に思い、眉を寄せると、彼女はすっと右手を挙げ俺をまっすぐ指差した。
「染井海、あなた。
まさにいのプロデュースを断るつもり!?」
そう言い放った。
俺ははぁーとため息をつき、ソファに座りこんだ。
何度となく杉田から言われた言葉。
なんでこんなやつにまで言われなきゃいけないのか。
「あんた、板東さんの差し金?」
そういうと、彼女は途端に怒りをあらわにして声を上げた。
「そんなわけないでしょ!まさにいを見くびらないで。私は私の意志で来たの!!」
「あんたの意志は、いつでも板東さんがらみだな。」
「ええそうよ。悪い?」
躊躇せずまっすぐに言い返され、俺はまたため息をついた。
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