1章 善と悪の差 2節 意志の神

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僕は窓の外を覗いていた。 目の前には、広大な海が広がっている。人は全く見当たらない。 そのせいか、時折、この海を独り占めしているような錯覚に陥ってしまう。 ただ、仕事をサボるためにここに来たわけではない。 仕事より重要な用事があっただけだ。 僕の携帯電話には、異常な数の着信が残っていた。後々、酷く叱られるな。 ホテルのロビーにある掛け時計は十時を示している。 正直、待ちくたびれた。 九時からずっとここに居るのだから。 すると、ホテルの入口から黒装束の生命体が入ってきた。 もちろん人型だ。 しかし僕には、この生命体を人とは呼べない理由があった。 「あんたがホワイトか。取引の条件はもちろんわかっているな?」 黒装束は口を開かずに言った。 「当たり前だ。これが倉庫の鍵だよ。」 そう言いながら、僕はみすぼらしい鍵を投げ渡す。 「また取引できることを望んでいる。」 黒装束はそう言い残すと、消えた。 フロント係が驚いた表情でこちらを見ていた。 僕は気に留めずに、そのまま車に乗り込んだ。 僕は悪人と呼ばれる者達の一人と言えるだろう。 僕のやることには社会的な利益は無いのだから。 車はやがて海を離れ、森の方に戻っていく。
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