1章 善と悪の差 2節 意志の神

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どうしたものだろうか。 仕事はこなさなければならないが、子供の友達を奪うべきではない。 「あなた、組合の人?」 困っていると、後ろから声を掛けられた。 「ああ、うん。そうだけど、何か用でも?」 僕は振り返って答えた。 そこにいたのは、身長が僕と同じくらいの女の子だった。 目は大きく、ぱっちりと開いていた。 いわゆる童顔だ。そして、なぜか白金色の鎧を着ていた。 「何か困ってるんですか?」 「この村の事でね。仕事を終わらせることはできるのに、どうしても罪悪感を感じてしまうんだよ。」 「どうして悩むの?何が正しいかなんて、既にわかっているじゃない。」 「どういうことだい?」 僕は能力をあえて使わずに、続きを言うよう促す。  「罪悪感を感じるなら、それは悪いことだって自覚があるってことじゃないですか。」 なるほど、確かにその通りだ。 しかし、良い事には複数の視点があるのだ。 僕の視点だけで決めたことが必ずしも正しいわけじゃない。 「だから、仕事はしなくていいと?もしそうならば社会は成り立たなくなるが?」 「みんなが納得してくれるように説得すればいいんです。それが仕事です。」 ・・・恐ろしいことを言う。 「不可能だ。それこそ狩猟を依頼されたのだから。」 僕は何故か彼女のペースに飲まれていた。 だから、必死で逃れようと反発した。しかし無駄だった。 「信じてみませんか。可能性はある、と。そうすれば絶対に出来ます。」 どこかで似た様な事を聞いた気がした。 ・・・・・・無茶苦茶だが、やってみようと思えた。
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