1章 善と悪の差 1節 警察長官の娘

4/8
前へ
/40ページ
次へ
メイはアジア系の顔立ちをしていた。 高校生ぐらいの身長でかわいいと形容すべき服を着ている。 ブラックソードは紫になっている足首を氷で冷やしている。 するとメイが口を開いた。 「助けてくださって、ありがとうございます。このお礼はいつかします。」 ・・・・・日本語だった。なんとなく分かってはいたんだけど。 この島にはあらゆる国から移民が集まっている。 ヨーロッパからの移民が最も多いので、普段はそれなりに会話できるが、日本語などはさっぱりわからないという人がほとんどだ。 ブラックソードもその一人だった。 僕は通訳をしてあげた。 ブラックソードは「別に大したことではない。必要ない。」と英語で言った。 「いえ、それでは申し訳ないですし・・・・」 どうやらメイは英語を理解できるようだ。今度は英語だった。 僕は時計を確認した。 八時二十分。 出勤時間は八時である。僕たちしかいないのはおかしくないか? 「なあ、ブラックソード。あいつらがまだ来ないんだけど、何か知ってる?」 「有給休暇をとって、温泉旅行に行った。」 「全員一緒にか?」 「そうだ。俺も誘われたが仕事の方が大事だと言って断ったんだ。」 僕は誘われた記憶がない。 ・・・・・あいつら、僕を一人で置いて行くつもりだったのか。 「で、今日の仕事は何だい?」 ふてくされたように僕は聞いた。 「俺の机の上に封筒がある。それ全部だ。」 見ると、三十通程の封筒が小さい机に積まれていた。 二人でできる量じゃないな。 出来れば、手を付けたくない。 「・・・とりあえず、この子を家に送り届けてからにしよう。」 僕はブラックソードに提案した。ブラックソードがいない間は仕事に手を付けなくてもいいはずだ。 責任者は彼なのだから。 「そうだな。頼んだぞ。」 「僕が行くのか?」 「仕事はしたくないんだろ。だったら行け。」 僕の思惑は全て見通されていたようだ。 仕方なく行くことにした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加