第1話

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「あぁ、この間の少年。……いや、君がまさか白信流の門弟とは知らなくてね。 この間のことは忘れてくれるといいのだが」 「勇、何の話だ。俺は聞いていないぞ」 近藤さんの隣に座っていた男が立ち上がりながら言う。隼人さんや真一郎さんと は違う方向の二枚目顔。長身ですらりとした男気溢れた人物だ。篤史と私の視線 がその人にいったのがわかったのか近藤さんは紹介してくれる。 「彼は土方歳三…私の友人だ。トシ、こちらはこの間知り合った白信流の凄腕剣 士少年の篤史くんだ……と、そちらの方は………」 近藤さんと私の目が合う。初対面だからなのかその瞳が好奇心で揺れている。近 藤さんは基本的に人が良いようだ。 「あぁ、こっちの優男は俺の師匠の椎。俺以上に凄腕だからよろしくな!」 「ちょっと!?篤史何言って!!!」 私が当たり障りのない自己紹介をしようとしたら篤史がとんでもないことを言い 出した。嘘吐きめ! 「そうか椎くんか…篤史くんの師というなら篤史くん以上に凄腕なのだろうな… …剣を見てみたいものだ」 近藤さんも納得してるし!? 「土方さん、こちらは?」 私達が話している間に先ほど私が戦慄しつつも見惚れてしまった男が土方という 人に聞いていた。 「総司……なんか勇が気に入った剣士らしい」 耳を澄まして聞いていたら目を見開くような単語が。総司、つまり私が戦慄した 相手はあの沖田総司なのだ。いつか手合わせしたいと思っていた彼がここにいる! 「試衛館がもっと大きな流派だったら君達に試合を申し込めたのに残念だなぁ」 「いえいえ俺から隼人さんに頼んでみます!」 「本当か?白信流とは今まで一度も手合わせしたことがなかったから嬉しいな」 「俺もです!隼人さんはきっと許可してくれます!!」 しかし何故篤史は近藤さんと意気投合してしまっているのだろうか。確かに手合 わせはしたいけど。どうやらここには他人を魅力するものがあるようだ。私は土 方さんと沖田さんが仲良く会話しているのを見てそう思った。 いつか彼と闘いたい…。 「馬鹿者!!!!!」 「ぎゃあぁぁあああ!!!!!」 真一郎さんが大声出すところ初めて見た…じゃなくて只今私と篤史は絶賛説教中 。当たり前だ。あのあと試衛館からこっそり戻った私達は案の定ようやく家路に つこうとした師範代三人にばったり出くわしてしまった。そこで嘘をつけば良か ったものの篤史はまったく普通にこう言ったのだ。
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