第1話

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「あぁ師範代。今試衛館行ってきたんだけど天然理心流とは手合わせできねぇの? 」 馬鹿正直にも程がある。それは瞬く間に隼人さんに伝わり、門弟が皆帰った道場 で師範代と隼人さんを向かいに私と篤史は正座させられた。 「何でぇ?別にそうまでして椎華を箱入りさせなくてもいいんじゃないの??」 篤史は危機感ないどころか近藤さんと意気投合した高ぶりのまま大胆な言動をす る。しかしこのままだと篤史ばかりに責任があるみたいになってしまう。私は無 言を通した口を開く。 「私………剣士として、外の世界を見てみたい」 口が滑ってかなり大きなことを言ってしまったが大丈夫だろう。 「椎華…でもお前は私の大切な妹なんだ。危険な目には合わせられない」 「師匠、大丈夫ですって。椎華より強い男のほうが少ないくらいです」 「篤史!お前は反省しろ!!」 「でも何だって試衛館なんかに…」 「私、あそこの人と手合わせしたい」 「でも椎華は女の子だし…」 「俺が上手く立ち回って椎華は椎っていう優男だと思ってるから大丈夫っすよ」 「お前…嘘ついたのか?」 「じゃあ、本当のこと言えば良かったんですか?」 「隼人さん、僕は頃合いだと思いますよ」 思わぬところに伏兵がいた。次郎さんである。彼が隼人さんに反対の意見を出す ところを初めて見たかもしれない。 「椎華ちゃんは確かに隼人さんの大事な妹ですが、男として育て、剣を持たせ、 強くなれと言ったのは貴方です。彼女は今選択したのです。強くなるための選択 を。それに、買い出しや使いで見かける椎華ちゃんのことを疑問に思う者もいる はず。門弟だってそうです。いっそのこと、彼女を雑賀原椎として、貴方の弟と して正式な弟子に迎えるべきだと僕は思います」 次郎さんがこんなに自分の意見をはっきりというところも初めて見た。 「しかし………」 「確かに次郎が言うことも一理ある。椎華の才能は滅多にない。このまま飼い殺 しをするのは逆に可哀想なのでは…?」 「それに椎華なら女ってバレないしな!」 師範代三人が私達の味方となり、隼人さんは一人考える。 「………条件つきならば」 隼人さんが出した条件は、 私は雑賀原の直系であることにする、私が女であることは言わない、私が他人と 接する際は隼人さんか師範代三人か篤史が一緒であること、の三つだった。 「椎!良かったな!!」 篤史が喜んで私に飛び付く。しかし一息先に隼人さんが私を自分の方へ引っ張っ
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