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ある町角にて
コトノハはふと立ち止まった
目の前に白い猫がいる
よく見ると右手に酷い切傷を負って血を流していた
(どうしよう…動物はちょっと苦手だから近寄れない…です)
困ったように眉をハの字にさせて猫を見つめる
猫はコトノハの気を知ってか知らずかみゃあと鳴いた
午後の町は静かで人通りが少ない
コトノハは周りに人がいないか確かめてから
恐る恐る猫の傍に近寄る
「すぐに治すからちょっと我慢してね」
猫の右手を両手でふわりと包み込む
するとコトノハの手のひらから青い光があふれ出て
猫の右手を包み込んだ
見る間のうち血は止まって傷口は塞がり
やがて傷の跡さえも消えて元の白い毛並に戻る
「これでもう大丈夫だから。次からこんな怪我をしないように、ね」
猫はみゃあと一鳴きすると背を向けてどこかへ行ってしまった。
猫の姿を完全に見失ってからコトノハは自分の右手を見やる。
手の甲に少し深めの切り傷
赤い血もにじみ出ていた
「結構痛いものですね…」
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