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ある質素な家の中
「コトノハにこれをあげよう」
その人は私に一冊の本を渡してきた
神々が織り成す神秘的な神話が綴られている分厚い本
ずっしりと重くて
その分読み応えがあるように思えた
「ありがとう、兄さん」
元々本が好きだった私は嬉しくて
自然に笑みがこぼれ出る
その人は少し微笑んで
私の頭を撫でくれた
血の繋がりは全くないけれど
いつからか私はその人を実の兄のように
慕うようになっていた
その人は剣術が得意で傭兵をやっていた
だから外からの情報もいろいろ教えてくれた
タラゼド、アルクトゥートス、アルシャイン、サゼルメリクのはもともと一つだったこと
このタラゼドをつくった王様の魅力あふれるお話
楽しい時間はあっという間に過ぎていくものだ
真上にあった太陽も気が付けば
西に沈みかけていた
窓から夕陽の光が差し込んでくる
「また来るから」
その人はそう言って黒いマントを翻した
「今度はもっと面白い本や話を持ってくる」
彼の言葉に私は表情を明るくする
「本当に?絶対?」
「絶対に」
その人は頷いて約束してくれた
けれどそれ以降
その人は私の元にやって来ることはなかった
―――
コトノハは小さい頃髪を伸ばしていたけど、
兵士になることを志してからは髪を短くした
という設定。
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