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どのくらいそうしていたんだろう。私の涙が少しおさまった頃、抱きしめられたまま彼の声が聞こえた。
「凪ちゃん、ごめんね。『ミモザの日』は何か言うことを聞いてあげようと思ってたんだけど・・・あと5分になっちゃった」
私は彼の腕の中から時計を見た。ホントだ。あと5分。
だったら欲しいものがある。
何かくれるって、あなたが言うのなら。
「片岡さん」
「ん・・・・・?」
「いつか、言いましたよね?
夜と・・・2人っきりの時と・・・お酒を飲んだ時は、キスしない・・・・・って」
「・・・・・うん・・・・・言ったね」
「今日・・・いま・・・って、それに全部当てはまるんだけど・・・・・・ 」
言いながらまた涙が溢れてきた。もう、こんな時に私はどうして涙も止められないんだろう。ちゃんと言わなくちゃ、って思ってるのに。
「でも・・・でも、いま・・・キスし」
最後まで言い終らないうちに片岡さんの唇が降りてきて、私はもう何も話せなくなった。
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