73人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
男性の姿が少ないせいか、店の中は柔らかくて優しくていい感じ。みんな本当に楽しそう。
片岡さんの会社の女性陣も来ているけれど、何故か斉藤さんは参加している。
さすがに若い男性は少なくて、彼は大人気。ワインをたくさん飲まされているみたいだ。
昨日から片岡さんはローマに出張している。帰りは遅くなるから寄れるかどうかわからない、と言われていた。
外は雨が降ってきたらしい。こちらの人はあまり傘をささないから、入ってくる人の髪やコートが少し濡れていた。
彼女たちが持っているミモザの花もしっとりと濡れて、雨の優しい香りがした。
ふと気づくと、私の立つ奥のカウンターの前に斉藤さんが立っていた。やっぱり少し顔が赤い。
「凪ちゃん。今日、片岡さん帰ってくるって?」
「はい・・・たぶんユーロスターだから、遅くなると思います」
「ふーん、・・・凪ちゃんさあ・・・片岡さんから、何か聞いてる?」
「え・・・・何をですか?」
彼は目を細めて私を見た。
「いや・・・なら、いいんだ。忘れて」
斉藤さんは軽く手を上げて、ちょっとふらふらしながら席に帰っていく。
え?なに?すごく気になるんだけど。何か私、聞くべきことが・・・あるの?それは、片岡さんのこと・・・だよね?
最初のコメントを投稿しよう!