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「ごめん・・・・3月の終わりから・・・・ローマに出張することになった。しばらくミラノに・・・・いられなくなる」
え?それ・・・・って。会えなくなるっていうこと・・・・?とすぐに思って、そんなこと言っちゃいけない、とまたすぐに思った。
とりあえず、笑ってみた。そして明るく言った。
「お仕事なんだから、片岡さん、謝ることじゃないです。どのくらいですか?」
「うん、先のことはまだ決まってないけど、とりあえず2ヵ月か・・・もう少し・・・かな」
「え?・・・・そんなに・・・・」
「うん・・・・6月にローマで大きなフェアがあるんだ。でも準備がすごく遅れてて。
出展するブースもすごく多いから、今回特別なチームが組まれることになったんだ。それでミラノからもフィレンツェからも日本からも人が呼ばれることになって・・・・・・凪ちゃん」
彼はふいに言葉を止めて、私の頬に手を伸ばした。
「・・・・・・泣かないで」
彼の指が頬を拭って、自分が泣いていることに気づいた。駄目。こんなことで泣いたりして、片岡さんを困らせてはいけない。
「はい。・・・・・大丈夫です」
私はうつむいたまま、静かに言った。大丈夫。私は大丈夫。私は大丈夫。
「・・・・・凪ちゃん、君にお願いがある」
え?と顔を上げた私に、片岡さんはとても優しく微笑んだ。
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