第8話

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自分からふった話題なのに 言わなければよかったと顔を歪め、唇をかむ。 「でも、酒もタバコも女も何の慰めにも癒しにもならなかった。  俺の心の隙間を埋めてはくれなかった。  だから、虚しくなって、やめた」 この人は、本当に正直な人だ。  都合の悪いことは蓋をしておけばいいのに。 隠さずにあたしに自ら暴露するなんて。 「それからは死に物狂いで勉強した。 兄貴の会社にも出入りして、世界経済や社会の仕組みも勉強して。  思えばあの時が一番楽しかったかも」   この人は、寂しさや悲しみを乗り越え、 強くたくましく成長したんだ。 「勉強や仕事をしている時は、 余計な事は一切考えずにすんだからな」 強靭な意志の持ち主で、素直にすごいと思う。
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