第8話

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あまりにきれいに重なったので、顔を見合わせくすくすと笑った。 つくづく、常務とは波長が合う。 車中でかかっていたラジオから流れる曲の好みや 好きなアーティストも同じで。 オリンピックの陸上選手の話とか、 共通点が多いと自然に話題が出てくるし、話していて楽しい。 くだらないジョークや あたしをいじくるようなつつき話を飛ばしてくるけど、 悪意は感じられなくて。 そして、それを嫌がって軽くあしらいつつも、 本音は―――… あたしはそのやり取りを楽しいとさえ思い始めている。 「職員室には先生がいるだろ? 行って見るか?」 「でも、知ってる先生はもういないと思う」 少しばかり塗装がはげかけてるけど校舎は変わりない。 でも、 ここにはもう、あたし達を知っている人は誰もいない。
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