第8話

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だって、このくだりでいくと キスでもしてしまうんじゃ……なんて思うと……。 常務も同じ光景を目にしているはず。 あたしは顔をひっこめると同時に後ろへ少しさがった。 だけど常務は同じように下がってはくれなくて、 あたしの背中と彼の胸はぶつかって ひっつく形になってしまった。 ―――と、その瞬間、常務の腕がのびてきて、 包み込むように掻き抱かれた。 「…っ、」 「少しだけ―――… 」 驚いたけど、 「少しだけ、このままでいて」 彼の言うとおりにした。 生温かい体温と男臭い肌の匂い。 それらに五感が触発されたのか、ドキドキし始めた。 そして、さっきの台詞…… 切なげな声と言葉が鍵となり、 脳の奥の蓋が開き、あるワンシーンが目の前に飛び出してきた。 “もう少しだけ、このままでいさせて” 観覧車の、ゴンドラの…中……?
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