第8話

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「そう…ですね」 さっきまでテンポよくなされていた会話は まるでお見合いの席についた人みたいに ぎくしゃくしたしゃべりに変わって…気まずい。 無言で歩き始めたけど、 「そうだ、部室裏にも用があったんだ」 常務が急に立ち止まって踵をかえす。 「部室裏?」 不思議に思いながらも彼の後に続いて小屋の裏側へまわると、 常務はネズミ色の壁に書かれた落書きを 一つ一つ丹念に調べている。 「確かこの辺だったんだけどな。  卒業記念に落書きしたんだが…」 「器物損壊はいけませんね」 「あほ、俺はおまえにそそのかされて 仕方なくつきあってやっただけだ」 「ええ!? そんな覚えはないけどな…」 あたしはさっきの気まずさをほぐすように 少しだけ大げさに驚いて見せる。
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