序章

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『魔王』。それは、この世にありとあらゆる災厄をもたらす、悪しき存在。この世界に生きる全ての者を苦しめ、その苦しみによって生を得る、人類の敵。 魔王は、今からちょうど1年前に、とある国に侵攻してきた。国軍は必死で抵抗したが、あっという間に壊滅させられ、国中に魔物が蔓延るようになった。 そんな時、一人の勇気ある若者が、国に伝わる伝説の聖剣『イクリプス』を手に魔王軍に一人きりで立ち向かった。鋼の鎧を身に纏い、ライトブラウンの髪をなびかせ、勇猛果敢に突撃したのだ。 若者は、その聖剣で魔王軍を圧倒し、次から次へと魔物に侵攻された町々を奪還して行った。 若者は、その国に生きる者の希望と言っても過言ではなかった。 やがて、若者は遂に魔王が居を構える魔王城へと辿り着いた。若者は、一気に魔王城へ突入し、次から次へと沸いてくる魔物たちを片っ端から聖剣で切り裂いて、魔王が待ち構える中央の部屋を目指した。 そして、いよいよ辿り着いた若者は、その巨大な扉を全身に力を入れて押し開ける。扉は、重々しい音を立てて、ゆっくりと開いた。若者は、一歩、二歩と歩みを進め、ついにその室内へと足を踏み入れた。 「ようやく辿り着いたぞ、魔王! さあ、俺と闘え!」 若者は、威勢よく大声で叫んだ。しかし、その部屋の中にいたのは、あまりにも予想外すぎる者だった。 「おう、オマエが勇者か。悪いが、今ちょっとそれどころではないのだ」 その部屋の一番奥にある、いかにも魔王が座るような、禍々しい装飾が施された椅子に腰掛けていたのは、どこからどう見ても6歳くらいの女の子……つまりはそう、幼女だった。
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