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血のエリアはどんどん広がっていった。後ずさりした男の足は暫くするとまた血のエリアのなかに飲み込まれていった。
茫然自失というのだろうか、その場から立ち去りたいと思っていても体がいう事をきかない。こんな体験は男にとっても初めての事だった。
後からきた教師達も同様に、あまりの凄惨さに言葉を失い立ち尽くしていた。何とか声をかけようと口を開けてはみるのだがかける言葉が見つからない。
すべての生徒が頭から飛び降りたのだ、誰の目にも即死状態なのは明らかだった。
「俺は第一発見者なのか?」暫くして正気に戻るとそう自問しながら、教師達の顔を見回した。
教師は3人居たが、内メガネを掛けた長身の教師は男の顔を見て首だけ軽く下げて一礼したが、顔は恐怖に強張っていた。あまりに人数が多かったためだろう。
おそらくお互いの中で応急処置というキーワードが交わされたのだろう。しかし応急処置の仕様が無い。頭がつぶれた9人の生徒をどう応急処置すれば良いというのだろうか?
やがてパトカーや救急車が何台もやって来て野次馬でごった返していた。
その中で数人の警察官とおぼしき人間が教師や周辺に居た人達の事情聴取を行っていた。
男も勿論事情を聞かれていた、第一発見者というあまりありがたくないレッテルを貼られてしまった。
なぜならまず第一発見者を疑え。とこうなるからだ。ただ、今回の場合私と被害者の距離が遠すぎるし目撃者も多い事からそれほど心配要らないとは思うが、そんな事件は沢山あり、やっぱり容疑者の一人にされてしまうに違いなかったからだ。
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