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天山は店員に彼女たちは宗教的儀式を行っていなかったか、尋ねていた。店員はその問いに対して首を振るばかりで、天山はいささか残念そうにしていた。
署に戻り早速防犯ビデオのチェックに入った。ビデオにはその日一日の出入り客の様子が記録されていた。防犯カメラは部屋奥から入り口を撮る様に設置されているようだった。
早送りをして問題の9人の女生徒が歌っている所のチェックを行った。
女性店員に案内されて大部屋に入ってくるシーンから輪島は目を凝らしてモニターを見ていた。
順に彼女たちは歌い始めた。選曲している者、手拍子を送る者どこでも見受けられる様子だ。
暫くして唯が入室してきた。唯が扉を開けた時唯の表情が輪島の目にとまった。
唯の表情が何かに脅えているようにしか見えない。なにか得体の知れないものを見た位の驚きようだった。
数秒後逃げるようにその場を後にした唯。「一体、唯は何に脅えているのだろうか。」
他の9人は唯が来た事にも何ら気付いておらず、唯が帰っても動揺すらしていない。気にせず歌い続けていた。
何度も巻き戻してチェックしたが変わった事と言えば唯の為に開けられたと思われるスペースが、唯が帰っても開けられたままになっていたことだった。
それ以外に不思議に思われるものはなかった。
分からない。「唯以外に誰かいなければおかしい。」そういう感想は輪島以外でも出ただろう。
そう思いながら輪島は天井を仰いだ。自分の分析力では分からない。かと言って佐伯の力を借りようとも思わない。佐伯ならば自分とは違ったチェックをするだろう。
散々迷ったあげく「探偵様の登場か。」とつぶやいた。輪島の頭には山下が浮かんでいたのだ。
輪島はその夜、山下に電話をした。
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