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「あー、はいはい。それはそれは幸せで何よりですね」 電話の向こうのはしゃぐ声に適当に相づちを打つ。 「じゃあねっ」と一方的に切れた電話に苦笑した。 「彩希ちゃん?」 「そう。毎日毎日、よく飽きないもんだわ」 「それだけ幸せなんだろうね。はい、どうぞ」 「ありがと」 テーブルに置かれた麦茶のグラスを両手で包み、小さく息を吐いた。 何かと無精な私に変わって、まめすぎるくらい動くのは神崎 佳祐。 付き合って4年目になる私たちは、週末は決まってどちらかの部屋で過ごすのが習慣になっていた。 彼は私よりも5歳年上で、普通のサラリーマン。 ただ、一部上場企業の役職付だということ以外は。 彼の歳での抜擢は異例だと、彼の同僚から聞いたことがある。 普段は、のほほんとしていて気を荒げることも無い。 そんな彼も職場では一切妥協を許さない仕事の鬼だと言う。 どっちの彼が本当の彼なんだろうと思うことが最近増えた。
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