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「彩希ちゃんと彼、結婚するのかな?」
佳祐はベッドに腰かけて、床に座る私の髪を後ろから弄る。
「してもおかしくないけど、一真さんの立場を考えると簡単なことじゃないと思う」
親友の彩希は、1ヶ月ほど前に元カレとヨリを戻した。
その彼は今や業界内で知らない人はいない寵児で、一緒の時間を作るのも一筋縄ではいかないらしい。
彩希は、その寂しさを私への電話で紛らわす。
その内容は笑えないノロケばかりなんだけど、それで彼女が気持ちを保てるならと聞き役に徹している。
「そうだよねー。彩希ちゃんも大変な人を好きになったもんだ」
「ほんと。でも、どっちかって言うと一真さんの方が彩希に惚れてるって感じだけどね」
それは昔から変わらない。
彩希から初めて紹介された時、彼がなぜか私を牽制の目で見ていたことを覚えている。
「今度こそ幸せになってくれなきゃ困るのよ」
「何で?」
「何でって……親友だからよ。あの子が泣くのも笑うのも全部あの人のためなんだから」
「なるほどね」と言った彼はベッドから降りて、私の背後に座った。
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