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「リロ、窓開けて」
「だめ。人に見られるから」
「二階なんか誰も見ないよ」
「だめ」
メイは俺の首に両腕を取られて、俺の両腕は彼女の腰に回っている。こんな所を人に見られたくない。余計な噂を立てられる。ましてや俺は、実は女だ。
KISSをする。彼女の口紅が縒れる。余った口紅が俺の唇をねっとりとさせ、俺は口づけを深くする。メイの鼻から息が漏れる。これをファルセットにするにはどうしたらいい?
考えていると彼女が動いた。震える手で俺のHipを触る。今度は俺が小さく声をあげた。
俺たちが出会ったのは入学式の日だ。まだ一ヶ月しか経っていない。K音楽高校の入学式。メイは髪の毛をシヨッキング・ピンクに染めて来た。
こんなガッコにも校則がある。「あまり派手な服装は避ける。制服は改造しない。学生らしい行動を取る」
くらいのものなのだが、守らないとすぐに退学になる。
「FUCK YOU!!」
ハスキー・ヴォイス。メイの声だろうか?
体育館に響く悪態。
俺は目立たないように彼女の方を見た。扉の傍の教師と生徒。そして教師は、生徒の顔を拳で殴りつけた。
「なぁな、リロ・・・」
「うん?」
昼下がりの教室。上目遣いのリロ。の席の真ん前に逆さ座りして、俺はリロに甘えるつもりだ。
「デートしてくれんのいつ?」
「・・・うーん」
「いつもそれじゃん。いつ?」
「歌詞書いてくれたらね」
初耳だ。リロは何を言ってるのだろう?
「歌詞って、何?」
メイはちらっと俺を上目遣いで見ると、小さく笑って言った。
「あたしたち、バンド組むんだよ」
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