第1話

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「リロ、窓開けて」 「だめ。人に見られるから」 「二階なんか誰も見ないよ」 「だめ」 メイは俺の首に両腕を取られて、俺の両腕は彼女の腰に回っている。こんな所を人に見られたくない。余計な噂を立てられる。ましてや俺は、実は女だ。 KISSをする。彼女の口紅が縒れる。余った口紅が俺の唇をねっとりとさせ、俺は口づけを深くする。メイの鼻から息が漏れる。これをファルセットにするにはどうしたらいい? 考えていると彼女が動いた。震える手で俺のHipを触る。今度は俺が小さく声をあげた。 俺たちが出会ったのは入学式の日だ。まだ一ヶ月しか経っていない。K音楽高校の入学式。メイは髪の毛をシヨッキング・ピンクに染めて来た。 こんなガッコにも校則がある。「あまり派手な服装は避ける。制服は改造しない。学生らしい行動を取る」 くらいのものなのだが、守らないとすぐに退学になる。 「FUCK YOU!!」 ハスキー・ヴォイス。メイの声だろうか? 体育館に響く悪態。 俺は目立たないように彼女の方を見た。扉の傍の教師と生徒。そして教師は、生徒の顔を拳で殴りつけた。 「なぁな、リロ・・・」 「うん?」 昼下がりの教室。上目遣いのリロ。の席の真ん前に逆さ座りして、俺はリロに甘えるつもりだ。 「デートしてくれんのいつ?」 「・・・うーん」 「いつもそれじゃん。いつ?」 「歌詞書いてくれたらね」 初耳だ。リロは何を言ってるのだろう? 「歌詞って、何?」 メイはちらっと俺を上目遣いで見ると、小さく笑って言った。 「あたしたち、バンド組むんだよ」
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