作中書籍まとめ

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Ⅸ 神冶支社資料(東の地についての見聞録 325年より)本編p470  東の地では動植物が独自の進化を遂げていた。  調査中、東の地の北にて、現地の民族と接触を試る。姿かたちは我々と酷似しているが、牙や角、羽を所有している者、身体が透けている霊のような者もあった。各々の詳細は後に記載するが、共通点は瞳の色。血のような赤色をしている。そして夜行性だ。言葉は通じる。 彼らは友好的で、食糧調達に同行させてもらったが、狩りの様子はまるで獣を見ているようであった。  我々と彼らのもう一つの違いといえば、力である。 我々の使う“気”とはまるで別の力を彼らは使っていた。聞けば、彼らは自らの身体を強化する力らしい。 この民族は、もう一つの民族と長年争っている。  調査をしたいならば、休戦中の今のうちに行くべきだ。と親切にも教えてくれた。価値観の違いだというのだろうか。我々では考えられない対応だ。  ここからは北にて出会った民族を彼らに倣って『夜の民』、南にて出会った民を『杜の民』とする。  もう一つの民族、杜の民は、東の地の南に拠点を置いていた。  彼らは用心深く、敵意を持って迎えられたが、交渉によって理解してもらえたらしい。  彼らには、牙も角もなかったが、肌の色が我々とは大きく違った。 灰を塗ったような肌の色に走る、刺青のような光る青い線。ただ、瞳の色は夜の民と同じように、血のような赤色であった。  彼らは、大気や木々を操った。火種のない場所から炎を出し、薪に火をつけてみせた。火に関しては、幻覚に形を与えたようなものらしいが、その場にあるものを繰る方が彼らは得意らしい。 民族の長に話を聞いたが、夜の民とこの杜の民の力の根源は同じだそうだ。彼らは“魔力”と呼んでいる。  途中、不注意にも夜の民にも会ったことを口にしてしまったのだが、こちらの民族もさして気にする様子がなかった。  お互いを憎しみ合っている様子が見受けられず、なにを争っているのか両民族に訊いてみたのが、彼らも分かっていないようで、「この争いを止めうる王を待っているのだ」という答えが返ってくるだけだった。
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