作中書籍まとめ

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NO.20 鬼  『1年の大半を寝て過ごしている』と迷い人Bは記している。クレトンも鬼について夜の民に訊いた話を書いているが、鬼は最低3日、長い時は10日以上眠ったまま起きてこないこともあるらしい。起きる理由は、大抵空腹。彼らは、覚醒時には絶えず食べるものを欲している。  共通に記される印象は、温厚で、眠たげ。身体的な特徴は、不健康を思わせるほど細い身体と青白い肌。頭にサイの角を思わせる突起がある。  食事は最も動物的で、動物の肉を生きたまま食すという。迷い人の中にはこれを間近で見たものもいるが、肉を食らう姿は肉食獣のそれを思わせるもので、トラウマになったようだ。好物というより、かれらが最も効率よく栄養をとれる肉は人肉であるらしい。  恐怖心からか、鬼に関しては、直接見ていなくとも、どの資料でも必ず触れられている。 NO.21 吸血鬼  血と女を好む紳士。すべての人の言葉を纏めれば、こんな一言でまとめられる。  血や冷気を操り、魔族が認知される以前の資料には、“死を運ぶ者”との表記がなされている。  吸血鬼と直に会話した者は少ない。参考にした資料でも、アダムスぐらいなものだった。  これはおそらく、かつて存在したスバルの体制下でも、貴族の中で外交を任されていた唯一の“王に最も近い種族”であること。それから、彼らのもともとの個体数の少なさが原因であろう。  彼らには寿命という概念がない。繁殖する術もない。だからこそ個体数が少なく、長い期間にわたって高い地位にあり続けていたのだ。  ただ、彼らも死なないわけではない。彼らは、一生のうちに1人後継者を決め、それを息子とする。この時点で、その息子は吸血鬼ではない。選ばれた息子に血を与える“継承”という儀式を行うことで、親は灰となって死に、息子が吸血鬼となるそうだ。  彼らは魔族の中でも特に異質で、資料上の空論かもしれないが、彼らの身体は死んでいるという。
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