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「かとちゃん、今日は午前中買い取りがメインだね」
同じように日程表を前に、梶さんが言った。
私がアルバイト先に選んだのは、よく客として利用していたリサイクルショップだ。
雰囲気の良い店で、働きやすそうだと思ってのことだが、内情は、そこまで易くはなかった。
たくさんの規則や査定のルール。
覚えることは山積みだが、手を休めている暇もない。
特に、買い取り業務は私を苦しめた。
「買い取り苦手なんですよね。難しいし、量も多いし」
と、私が冗談めかして言うと、梶さんは「まぁ、がんばって」と笑った。
私が働くリサイクルショップは、服や雑貨の買い取り、販売をしている。
隣には同系列のリサイクルショップがもう一軒並び、そちらは電化製品や楽器を扱っていた。
朝礼は、二軒が一緒にすることになっていて、今日は私が働く店舗で行われる。
裏口が開き、数人が挨拶をしながら入ってくる。
そこに、知らない顔があった。
同い年くらいの男性。
「新しいバイトさんですか?」
私は隣に並ぶ梶さんに、ひそひそと窺った。
梶さんは首を横に振る。
「んーん。元からいる子だよ。そういえば、久々に見た気がするなー」
「そうなんですか」
私は彼を見た。
カッターシャツにグレーのカーディガンを羽織っている。髪は茶色がかって、柔和な笑みで、周囲の人と喋っていた。
それが、山田さんだった。
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