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私と山田さんの関係がわずかに動き出したのは、初めての会話から二ヶ月が過ぎた頃だった。 12月も半ばになり、その日は雪が降り積もっていた。 朝礼を終え、店のシャッターを開ける。 外は寒く、私は軍手をつけて作業を続けた。 全てのシャッターを開け、支柱を外す。 隣の店舗でも同じ作業をしていた。 「おはようございます」 かけた声に反応したのか、顔が覗く。 それが、山田さんで、私は驚いた。 「おはよう、加藤さん」 青い上着を着て、作業する山田さんの顔は、寒さにか、それとも重労働にか紅潮している。 「今日も寒いですね」 次々と開店作業を進めながら、私はできる限り話しかけた。 そうしたくて、仕方なかった。 こんな浮ついた気持ちは、21年間感じたことはなかったはずだ。 そう思い至ると、顔が熱くなって 、だけどそれも寒さのせいにできた。 「ほんと寒いよね。僕寒いの苦手でさ」 「私も苦手です。冬は着込めばなんとかなるって皆言うけど、私は夏のほうが好きです」 思わず饒舌になる感情を抑えて、なんでもないふうを装うのは、意外と難しい。 浮上しては、また押し留める心は、まるでブランコに揺られるようだ。 お腹の下あたりが、ふわりとする。 「加藤さんって、今いくつなの?」 最後の支柱を取り外しながら、彼が言う。 「私、21歳です」 そう返答すると、「あ、同い年なんだ」と彼が言った。 その表情はどこか嬉しそうで、私はまたせわしくなる。 .
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