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 ベッドに座るとき、流石に抵抗を感じたが、他に場所はない。 私は仕方なしに、そこに腰を下ろした。 所在なげに視線がうろついてしまう。  一階の、玄関脇の階段を上ると、正面と左右に扉があった。 彼の部屋はその右側の扉だった。 扉からすぐの場所に、壁に垂直に置かれたメタルラックが3つ並んでいる。 たくさんのCD(洋楽、邦楽、ジャズ、クラシック、JPOP。それは多ジャンルで多岐にのぼる)や、DVD。 書籍に参考書。 それらの物が、満員電車さながら詰め込まれていた。 その横にある学習机にも、対面に据えられたクイーンサイズのベッドにも、そこに納まらなかった物が溢れているのだから、驚くしかない。  階段を上がる音がしてすぐ、扉が開いた。 「お待たせ」 そう言った彼の手には、長方形のトレイとそこに載せられた2つのカップがある。 「お構いなく」 と、私が言いきる前に彼はベッドにたどり着くと、その場に座る。 私との間に、無造作に厚めの雑誌を置くと、その上にトレイを乗せた。  彼もベッドに座るしかないことを、私は判っていたはずだった。 なのに、鼓動は一拍速くなり、顔が熱くなる。 私たちは、そんな大それた関係ではない。 友達ほどに親しいわけでもないのだから、こんな反応はおかしいのだ。 これは、そう。恋愛経験が乏しいから、こんな小さな事にも敏感になってしまうのだと、私は自分に言い聞かせた。 .
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