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 「すごくたくさん本があるのね」 ばつの悪さを悟られない為に、私は話題を振った。 彼は、花柄のカップを私のほうに寄せると、笑った。 「そうなんだ、実はこのベッドの収納2ヶ所も本でいっぱいだし、それに」 と言うと、彼はクローゼットを指さした。 開きっぱなしのクローゼットには、ジャケットが数着掛かっていて、その隣に三段タイプのクリアボックスが2つ。 「あのボックスの中にもマンガとか文庫本とかが入ってる」 「え、そんなに?」 私は驚いた。想像以上だった。  山田図書館。 私はひそかにそんなことを考えた。 これからは、ここを山田図書館と呼ぼう。 本の貸し出しは、許可してもらえるだろうか。 きっと彼なら、笑って許してくれるだろう。  そんな物の量以上に私を驚かせたのは、クローゼット前に置かれたドラムセットだった。 本当は部屋に入った瞬間から、気になってしかたがなかった。 「一般家庭にドラムセットなんてあるの?」 私が尋ると、彼は「練習用電子ドラム」と短く言って、カップに一度口をつけた。 「練習用」 私は短く反復する。練習用電子ドラム。 「趣味のバンド、組んでるんだ」  今、改めて見渡すと、たしかにたくさんの趣味の中で、1番の割合を占めているのが《音楽》のようだった。 机上にCDは山積みだし、ラックにあるのは書籍だけじゃなく、レコードや楽譜だってある。 .
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